わんわん列車で衝突防止

山間部を走る列車が野生の動物、とりわけ鹿と衝突する事故が多い。鹿のような大型の動物と衝突すると、列車の側にも故障個所が出るなど、走行出来なくなるケースもある。そこで線路に入って来る鹿を追い払おうと編み出されたのが犬の鳴き声を振りまく「わんわん列車」だ。

犬の鳴き声で、鹿の目撃大幅減

開発に当たっているのは東京の鉄道総合技術研究所だ。列車に取り付けた装置から、警笛ならぬ犬の鳴き声を響かせて走ったところ、100㎞あたり13.6回、鹿に出会っていたが、これが7.5回と45%も少なくなった。
鹿は仲間に危険を知らせる、独特の警戒音を発するが、まずはこの音を流し、続いて鹿が大嫌いな犬の咆哮を聞かせる。先頭車のスピーカーからこれらを繰り返し流すことで、先の効果が上がった。また線路柵のある区間でも、柵の開口部へ同じような音の出る装置を設けたところ、鹿が逃げる様子が目撃された。
鹿との衝突事故が多い北海道だけでなく、四国や九州でも試験を重ね19年に実用化する方針だ。今後は山の中で犬の鳴き声を響かせながら走る列車が見られることになりそうだ。

雑学ライブラリー
交通機関と動物

鳥との衝突は離陸着陸とも危険

列車や飛行機が動物と衝突するケースは後を絶たない。以前小欄でもお伝えした北海道新幹線とタヌキの衝突事故(16年5月7日)。しかし深刻なのは鳥と航空機。思い起こすのはハドソン川の奇跡、ニューヨークを離陸したばかりのエアバスが鳥の大群と衝突、すべてのエンジンが停まって、ハドソン川に不時着したあのケースだ。
昨年は日本の空港全体で1626回のバードストライクがあり、22便が引き返すなど緊急着陸をしている。羽田空港でも猟銃の空砲を撃ったり、天敵の鳴き声を流したりしているが、空飛ぶ動物相手には決め手に欠いている。