空飛ぶクレムリンの正体
|ロシアのプーチン大統領が、大統領として11年ぶりに来日した。一泊二日の慌ただしい日程で、山口県と東京での二度の首脳会談を終え、16日夜、羽田空港から大統領専用機、人呼んで「空飛ぶクレムリン」で帰途に就いた。
エアラインには受けない機体
ロシア大統領専用機は、IL-96-300PU、 ILは旧ソビエトのイリューシン設計局の頭文字だ。IL-96の元になったのは、西側の旅客機に対抗するため1980年代、ロシアで初めての2本通路を持った大型機として開発されたIL-86。これをベースに、エンジンを新型に替え、電子機器をふんだんに取り入れた機体として登場したのがIL-96だ。従って機体の設計そのものは決して新しくはない。
航法機器やエンジンを新たなものにしても、エアラインにとっては魅力的な機体とは言えないようで、ボーイングやエアバスの機体が目立つアエロフロートでは、IL-96 は全機リタイアしている。ロシア政府としては大統領専用機は、秘密保持などの点からもロシア製にこだわり続けなければならないのかもしれない。
雑学ライブラリ
クレムリンー
クレムリンは大統領府があることから、モスクワの政治中枢や旧帝政ロシアの宮殿を指す名称と思われがちだが、本来の意味は砦、城砦だ。従ってモスクワだけでなく、ニジニ・ノブゴロドやカザンなど、古くからある都市にはその街のクレムリン(砦)がある。
テレビ各局のクレムリンを背景のモスクワ中継では、レーニン廟がある赤の広場に面したサイドと、モスクワ川(ヤウザ川)を挟んだクレムリン大宮殿の遠景が定番。クレムリンの隣、赤の広場の一角にある聖ワシリー寺院はカラフルなネギ坊主のドームで有名だ。これを建立したのはイワン雷帝だが、出来栄えのあまりの美しさに、同じものを作らせまいと設計者の目をつぶした逸話が伝えられている。