100億円かけて世界遺産 軍艦島を守る
|長崎市は、世界遺産となっている長崎市沖合の産業遺構、端島炭鉱(軍艦島)を108億円かけて保全する方針を固め、市議会に報告した。
閉じ込められた「時代」
端島炭鉱は1890年の採掘開始から1974年の閉山まで約1570万トンの石炭を海底から供給し続け、「明治日本の産業革命遺産」を構成している世界文化遺産だ。面積6.5haほどの島は、閉山の年の4月に最後の住民が去って40年以上が経ち、所々に残っているかつての生活の跡が、閉じ込められた時代のように残っている。しかしこれらの住居跡も潮風にさらされ急速に劣化が進んでいる。
ユネスコの世界遺産委員会は、島の保全計画を立てるよう勧告し、2017年中に報告書を提出するよう求めている。
長崎市の保全計画では、島の護岸や坑内員が出入りした立て坑などの生産施設、それに住居跡など、遺産価値の高い箇所を重点に劣化防止を施していく。期間は30年を予定しており、国などにも財政支援を求めていく方針だ。
クローズアップ雑学
007の島
軍艦島にないのは火葬場と墓地くらいで、狭い島の中には学校、病院、映画館などの娯楽施設などなんでも揃っていた。一時は5000人以上が住んでいた島は廃墟と化し、時間を閉じ込めた空間となった。
007シリーズのスカイフォールは、軍艦島の廃墟となったアパート群をモチーフにしている。モチーフの意味は、ジェームズ・ボンド(ダニエル・クレイグ)がやってきてロケを行ったわけではない。ロケハンを軍艦島で行い、そっくりなセットをロンドンに作り、そこで撮影されたのだ。
日本にかかわりのある007はもうひと作品あって、意外にも同じく九州で実際のロケが行われている。1967年に公開された「007は二度死ぬ」で、鹿児島県、現在の南さつま市へボンド役のショーン・コネリーがやってきて撮影が行われている。ボンドガールは浜美枝で、なんと作品中でボンドと結婚している。
「二度死ぬ」は舞台のほとんどが日本で、ロケット基地として霧島連山の新燃岳が登場している。この火口湖は噴火のため無くなったとか。公開が端島炭鉱の閉山前なので、軍艦島の映画館でも公開されていたかもしれない。