今年3月、もやし生産者協会が、窮状を訴えた。原料となる緑豆(りょくとう)の高騰にも関わらず、小売価格が抑えられているため、多くの生産者が経営難に陥っており「食卓からもやしが消えてしまう」と危機感をあらわにした。半年たって窮状は改善されているのか?
手軽に買えるもやしだが
どれも同じに見えるが、もやしは原料により種類が3つある。緑豆、大豆それにブラックマッペと呼ばれるもやし豆だ。市場に出ているもやしの9割は緑豆が原料だが、中国やミャンマーなどから入るこの緑豆の価格が上がっていて、2005年の価格から3倍にも上がっている。しかし安い食材の代名詞ともなっているもやしは、小売価格は逆に下がっていて、1977年、つまり40年前の価格より安いのが現状で、生産者協会では、企業努力も既に限界としている。
適正価格は100gあたりおよそ40円としているが、コンビニなどでは概ね40円前後で売られているものの、小売店での平均価格は15.61円(総務省2016年データ)で、適正価格にはほど遠い。24時間生産で、数日で出荷できるもやしだが、太陽光線の下で育つものではないので、殺菌などの安全管理は徹底しなければいけない。栄養価も高く、手軽に食べられるもやしは貴重な食材で、40円前後でも実に有難い食品と言える。
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戦争の勝敗を決めたもやし
もやしという名前が文献に登場するのはなんと平安時代、日本で最も古い薬草の本に「毛也之(もやし)」の記述が登場する。また1300年代には楠正成が、今の大阪府南河内にあった赤坂上城に立てこもった際、豆の芽を食べて兵糧攻めを耐えたと言われている。
日露戦争の勝敗ももやしが握った。冬の闘いで、ロシア軍は野菜の欠乏によるビタミン不足に陥り、多くの将兵が壊血病を患い、戦闘できなくなった。実は露軍の元には、大豆が豊富に保存されていたという。大豆そのものには含まれていないが、もやしに育てるとビタミンCが含まれる。もやしを食べる文化の無かったロシア人は、もやしを育てて野菜不足を補う方法を知らなかった。もやしが日露戦争の陸戦を日本の勝利に導いたともいえる。