JR東日本はこのほど、次世代型新幹線の開発に向け、来春新たな試験車両を導入すると発表した。北海道新幹線の札幌乗り入れが始まる2031年春を目指し、時速360㌔での営業運転を実現する。
世界最速の新幹線を東京~札幌に
世界の高速列車は、1964年開業の東海道新幹線に端を発するが、現在営業運転での最速列車は、日本の東北新幹線とフランスのTGV,それにドイツのICE3の3つの列車で、いずれも時速320㌔だ。中国の高速列車は、時速350㌔でデビューしたが、40名が亡くなった温州市での事故のあとスピードを落とし、時速310㌔で運転している。
来春、試験に投入されるのは“最先端試験を行うための先進試験車両”の意味を込めた「ALFA-X(アルファX)」と呼ばれる10両編成の新幹線だ。JR東日本では速度や快適性の向上とともに、地震時の安全性や雪対策、それに車両の機器や線路設備の状態などを、走りながらモニタリングを行う革新的なメンテナンス・システムを導入する。
時速360㌔運転実現へのアプローチは、2009年まで別の試験編成列車(FASTECH360)を使って行ってきたが、ALFA-Xの投入で世界最高速運転が実現に近づくことで、盛岡以北の運転速度(現行時速260㌔)と貨物列車との共用となっている青函トンネルの減速(時速140㌔)問題がクローズアップされそうだ。
雑学ライブラリー
解消したいトンネルドン
今回の試験編成は、ALFA-XのFで示されている通り、フロントライン(先端部)の形状が重要な試験となっている。「トンネルドン」を軽減するためだ。
トンネルドンとは高速で走る列車がトンネルに入ると、中の空気が押し出され、反対側の出口で微気圧波が「ドン」という衝撃音が生じる。高速で走る新幹線は特に微気圧波が作る音は大きく、環境問題ともなっている。JR北海道のH5系や東日本のE5系のカモノハシのような先頭部分は、それらの対策の結果だ。