アメリカのパリ協定離脱がもたらすインパクトは大きい。世界中からだけでなく、アメリカ国内でも様々な方面から非難の声が上がっている。
南北両極から忍び寄る温暖化の嵐
「地球温暖化はでっち上げだ」と唱えるトランプ大統領の認識とは異なり、温暖化による影響は危険水域まで来ていると言えそうだ。南極での影響を研究しているイギリス、スウォンジー大学(Swansea University)のエイドリアン・ラクマン教授らによると、ラーセンCと名付けられたアイス・シェルフ(棚氷)に巨大な亀裂が走り、なんとアメリカのデラウエア州の広さに匹敵する、これまでにない巨大な氷山となる恐れが生じている。
棚氷(たなごおり)とは氷河などが作り出すもので陸地と繋がっている巨大な氷の塊だ。これが分離すると氷山となる。研究チームによるとラーセンCの氷山化は避けられず、それも早々にその時期がやって来るという。ラーセンCが分離することで、その周囲の棚氷が不安定化し、さらに後ろに控えている氷河が海に押し出てくると、世界の海面水位が10センチも上昇するとの予測もある。NASAによると今年3月の観測で、南極、北極の海を覆う氷の面積はこの38年間で最少だという。対温暖化対策はまさに待ったなしだ。
雑学ライブラリー
ディアフター・トゥモローの真実
2004年にヒットした映画「Day after tomorrow」は、地球温暖化が進行し、逆に氷河期を招く様が描かれている。決して荒唐無稽な話ではなく、科学的にありうるのだ。温暖化で両極の氷が融け、氷の入ったタンブラー同様に海水温の低下が起きる。冷たい海水が表面から海底方向へ沈み込み、海流の流れが急激に変化する。
エルニーニョに代表されるように、大洋の巨大な海流は気象に大きな影響を及ぼす。映画では、海水温の急激な低下がきっかけとなって、北半球は氷河期に匹敵する氷の世界に変わってしまう。
気象学者からは「映画のようにわずか数か月での気候変動は考えにくいが、科学的に十分ありうる」とのコメントがいくつも出ている。