金正男氏が殺害されて2週間、マレーシア当局は殺害の方法はVXガスと断定したが、詳細はまだ分からないだらけだ。暗殺には北朝鮮当局の関与なしには実行不可能との憶測が強くなっている。一方、北朝鮮国内では国民はこの世界的な事件を全く知らないようだ。
見た!20年前の北朝鮮とは
北朝鮮へは20年前、渡航取材も含め、いくつもの関連取材を行った。現状伝え聞く北朝鮮の市民の暮らしは、平壌においては訪問当時とはかなりの開きがあるのかもしれないが、地方においてはおそらくそう大きな違いは無いように思える。
20年前、ロシア国境から平壌まで一泊二日の列車旅、外の風景に恐る恐るカメラを向けた。踏切にも駅のホームにも人の気配はない。しかし良く見ると踏切では線路から離れたところで塀や家の陰に隠れるように人たちが列車の通過を待っていた。途中駅では目を凝らすと、電力事情が悪く灯りの無い真っ暗な駅舎に沢山の人がいて、じっと列車を待っているのが見えた。驚いたのは、夜明けに大きな駅で列車に水の補給があった時だ。線路わきの大きなホースを車両ごとに接続する担当者がいて、これが全員女性、それも早朝にも関わらず皆しっかり化粧を済ませて、とても力仕事をする様相ではなかったのにびっくりした。おそらく、外国人が乗った列車であることを事前に通知され、それに備えていたものと思われる。
なんとも便利な?ホテル
平壌で宿泊した高層ホテルでは、テレビの電源が分からず、助手とその話をしていると突然ホテルの担当者がやってきて、電源の点け方を説明してくれた。更に室内にあった北朝鮮製と思われる冷蔵庫が故障していると、やはり助手と話をしていたら、外出から戻ると冷蔵庫はロシア製の新しい冷蔵庫へ変わっていた。独り言を言うだけで必要なものがやって来る。助手と「どこかに盗聴器があるのか?」と顔を見合わせた。