金正男氏暗殺事件で、マレーシア当局は朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)国営のエアライン、高麗航空の職員を事情聴取の対象者として、北朝鮮への照会を行っている。民間航空のはずの高麗航空とは一体どのようなエアラインなのか?
安全に問題ありとしてEUは乗り入れ禁止
東西対立が続いていた頃、旧共産圏諸国のキャリアは、本来のトランスポーターとしてのデューティー以外にも、偵察や表に出来ないモノを運ぶなどの仕事を課せられていると推測されていた。高麗航空は国営航空であり、軍とのかかわりも深く、今も航空会社以外の任務もあるのではと言われている。
ホームページを見ると海外路線は平壌から北京、上海、瀋陽それにウラジオストクの4路線で、機材はすべて旧ソ連機とその流れをくむ飛行機で、かなりの年代物ばかりだ。老朽化だけの問題ではないようだが、EUは高麗航空とそれを監督する北朝鮮の民用航空当局の安全管理に問題ありとして、高麗航空のEU域内への乗り入れを禁止している。
経済制裁もあって、西側機は調達したくとも難しい状況ではあろうが、高麗航空はそのガラパゴス化を逆手にとって、外貨獲得に一役買っている。既にロシアでも見られない旧ソ連機に乗るツアーやエアショーを実施、日本を含む海外からのツアーを募っている。
今年も開催へ元山(ウォンサン)エアショー
本欄2016年5月15日付け記事でも伝えているが、昨年9月に平壌からおよそ200㎞離れた、日本海に面した元山で初のエアショーが開かれた。
飛行展示には朝鮮人民軍の戦闘機も登場し、今や骨董品のMG-21や人民軍では新しいMG-29も飛ばすなど大サービスであった。
自国民のためではなく、外貨獲得のためのエアショーだけに、高麗航空は海外からのツアー客の輸送を一手に引き受けるほか、いにしえの旧ソ連機を使って外国人向けの遊覧飛行まで実施、大いに盛り上げたようだ。
この元山エアショーは今年も開かれるようで、早速サイトが出来ている。しかし現在の北朝鮮の体制では実施できるのか危ぶむ声もある。