JR各社は鉄道事業の先細りから多角化を進めるが、JR西日本はこのほどレールとは全く無縁の牡蠣の養殖事業にのりだした。
陸育ちの「オイスターぼんぼん」
牡蠣の養殖は、JR西日本が地元の新たな地域産品を掘り起こそうと始めたもので、広島県で牡蠣の養殖に取り組んでいるファームスズキなどとタッグを組んでスタートさせた。
「オイスターぼんぼん」と名付けられた牡蠣が育つのは海ではなく池だ。瀬戸内海に浮かぶ大崎上島(おおさきかみじま)の塩田跡地を利用した養殖池で、地下から汲み上げた海水を使って育てられる。言わば普通の海で育った牡蠣とは違う、世間の荒波知らずのお坊ちゃん牡蠣だ。
ノロウイルスとは無縁
普通の海水と隔絶していることで、こんなメリットもある。ノロウイルスの感染に心配のない安全な牡蠣が育っているのだ。食品分析開発センターのHPによると、感染した人間から排出されたノロウイルスのうち、排水処理施設の浄化システムを潜り抜けた一部のウイルスが海に出て、貝に蓄積、それが再び人の口に入り新たな感染を呼ぶ。ところが地下からの汲み上げ海水で育つ「オイスターぼんぼん」はウイルスの影響は受け難く、感染の心配は無用だ。
「オイスターぼんぼん」は今月、大阪梅田と東京新宿のオイスターバーで販売が始まる。
雑学ライブラリー
鉄道会社と農水産物
JR西日本は「オイスターぼんぼん」に先駆けて、鳥取県でやはり地下からの汲み上げ海水でサバの養殖に取り組んでいる。こちらのネーミングも、ぼんぼんに負けない「お嬢サバ」。
鉄道、特にJRの多角経営のトップを走るのはJR九州だ。JR九州は鉄道事業は赤字だが、それを補う多角経営で今年(2016年)上場を果たした。
JR西日本の海の幸シリーズとは異なり、九州は野菜などの農産物に積極的だJR九州ファームが生産した野菜を、駅近の八百屋の九ちゃんで売りさばく。野菜の輸出にも乗り出す構えだ。JRは農水産物を運ぶ役から生み出す役に周っている。