先月28日、南米コロンビアの都市メデジン近郊で起きた旅客機の墜落事故、71人もの犠牲者が出た事故は、燃料切れが原因との見方が強くなってきた。
航続距離ぎりぎりのフライト
この旅客機にはブラジルのプロサッカーチームが乗っており、名のある選手も沢山犠牲になったことで注目を浴びた。事故を起こしたのはイギリス製のアブロRJ85。ヨーロッパ域内では比較的目にする機種で、BAe146として1983年に初就航、4基のジェットエンジンを備えた安全性の高い旅客機だ。
ニュースによると事故機からは、電気系統のトラブルとともに燃料が足りない。との交信があった。電気系統の故障で燃料計が正しい数字を示さなかった可能性もあるが、同機の航続距離はフルペイロード(満載)でおよそ3000㎞。出発地のボリビアのサンタクルスからコロンビアのメデジンまではぎりぎりだ。悪天候などで上空待機の必要性が出た場合、ほとんど待機は不可能だったろう。
事故現場は火災の発生も無く、燃料が殆どゼロだった様子がうかがえる。
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実はほかにもあるガス欠事故
空ではGSによって給油するわけにはいかないが、燃料が不足して事故となったケースはほかにもある。有名な事故は、なんたる因縁か今回の事故の現場となった、メデジンからニューヨークへ向ったコロンビアのアビアンカ航空52便。悪天候で上空待機中に燃料が無くなりロングアイランドの森の中に墜落、73人が死亡した。パイロットが緊急事態をしっかり管制官へ伝えられなかったのが原因とされた。
その他、他の故障に気を取られて燃料が無くなったのに気が付かなかったケース(ユナイテッド173便事故)。エア・カナダ143便(ボーイング767)の事故はセンセーショナルだった。搭載燃料の量をポンドとキログラムのスケールを間違えて少なく積み込んでしまい、一万メートルの上空で全てのエンジンか停止した。しかしこの事故は、パイロットが大型ジェット機を巧みに滑空させ、軍の基地に着陸することが出来たため一人の犠牲者も出なかった。
旅客機はコントロールを油圧や電気に頼っているため、エンジンが停まると何も操ることが出来なくなる。それがなぜ無事生還できたのか。多くの旅客機には最後の切り札がある。小さな風車を備えていて、いざという時にはこれを展開する。その風車が作り出す電力や最低限の油圧で飛行機を操ることが出来る。この手の事故で最大の味方は高度だ。滑空するチャンスがあれば助かる可能性は高くなるが、今回のメデジンでの事故のように着陸間際に全エンジンがロスすると手立てはない。