点と線
|松本清張 新潮文庫 ビデオ映像 映画版 テレビ朝日版
清張作品にのめりこむきっかけとなった作品。小説に登場する場所を訪れるのが趣味で、物語に登場した光景を確かめたり、その後の移ろいを楽しんだりするのが大好きだ。「点と線」では物語の冒頭、福岡の香椎海岸で心中を装い殺害される男女が国鉄香椎駅から海岸方面へ歩き去って行く様が描かれている。20年ほど前、福岡へ行った際、JRに乗って香椎まで行き、そこで降りて西鉄香椎まで歩くついでに、途中の書店で「点と線」を購入した。この時買い込んだ「点と線」はおそらく3冊目で、帰りの電車内から読み始めた。物語では国鉄香椎駅前の八百屋の主人が警察の聞き込みを受けている。現在のJR香椎駅は4階建ての駅ビルとなっていて、駅前には八百屋は無く、商店街が西鉄香椎方面へ伸びている。
「点と線」では病床の女性が、JTBの前身、交通公社発行の時刻表を駆使して事件計画を組み立てるが、博多湾での偽装心中を裏付けたのが、東京駅で15番線ホームから博多行きの特急寝台に乗り込む二人を13番線ホームから見かけた目撃証言だ。このシーンで有名になったのが、当時でも頻繁に列車の発着が繰り返される東京駅で、13番線から15番線を見通すことが出来るたった4分間の空白時間の存在だった。
ちなみに現在の東京駅には11~13番線は欠番で、14~19番線は東海道新幹線ホームだ。
「点と線」では事件の発端が福岡で、アリバイ作りには札幌が利用されている。飛行機が珍しい昭和30年代に、全国をまたにかけたトリックは、交通公社発行の雑誌「旅」で始まった連載にはうってつけだった。札幌では当時盛業していた丸惣旅館が登場する。容疑者の会社社長が宿泊した丸惣旅館は時計台の前、札幌市中央区北1条西3丁目にあった高級旅館で、現在はオフィスビルとなっている。
「点と線」昭和の時代を感じることが出来るが、ストーリーは色あせることなく今も読むことが出来る。因みに「点と線」は英語だけではなくフランス語やイタリア語、中国語、韓国語など世界のいくつもの言葉に翻訳されて世界の書店で並んでいる。英語版のタイトルはそのものズバリ「Points and Lines」
ネタバレしてしまったが、それでも本当に面白く読める。
現場臨場 香椎海岸
博多湾に作られた人工島アイランドシティが正面、近くには高速道路の香椎浜インターチェンジや大規模ショッピングセンターもあって、今や心中にふさわしい寂しい海岸ではない。 JR香椎駅までは博多から門司方面の電車で10分。ここまで来たら北九州の松本清張記念館にも寄りたい。JR西小倉駅徒歩5分
札幌丸惣旅館跡
容疑者が宿泊した実在の高級旅館。宿帳のサインがアリバイとなる。札幌の観光スポット時計台の正面にあったが現在はオフィスビル。左側が丸惣旅館跡のビル(MNビル)で、木立の中に隠れているのが時計台。地下鉄大通駅徒歩5分
丸惣旅館跡のビルは札幌時計台のベストショットが取れるオープンテラスがある。そこから撮ったのが上の一枚。札幌観光の際はお勧め。
レストラン レバンテ
容疑者がアリバイ作りのため女給達を食事に誘ったレストラン。現在はJR有楽町駅前の東京国際フォーラムの中で営業中。