スカイジャック

トニー・ケンリック     新潮文庫

 

360人の乗客を乗せサンフランシスコからニューヨークへ飛び立ったボーイング747ジャンボジェット機が、忽然と姿を消した。レーダーから消えたものの、異常を知らせる交信もなく、墜落した痕跡もみつからない。航空会社へは身代金を要求する連絡が入り、航空事故ではなく前代未聞大誘拐事件であることが分かる。要求額はダイヤモンドの原石で2500万ドル。

離陸後パイロットからは気流の悪いところを避けるため、航路を変更したいとの無線が入り、湖の付近を飛んでいるところでまるでゆっくり降下するようにレーダーから消えた。

FBIが必死の捜査をするが、飛行機や乗客の行方は知れない。ハイジャックされた飛行機が消えてしまっているため、犯人との緊迫のやり取りは出てこない。そればかりか、コックピットやパニックに陥った機内の情況も出てこない。シャドー81同様、犠牲者は一人も出ないのだが、抜群に面白いエンターテイメント小説だ。

その面白さのカギは、事件に関わってしまった売れない弁護士べレッカーと、アシスタント役の元妻アニーのなぞ解きとやり取りだ。2人の言い合い喧嘩は絶妙だ。「べレッカー、私、今でも思っているのだけど、私たちの結婚にも一つだけいいことがあったわね、それだけはいつまでも大事に残しておかなくちゃ」「なんだいそれは」べレッカーはしぶしぶたずねた。「離婚したこと」こんなやり取りが頻繁に出てきて、笑い転げながら読み進むことが出来る。

犯人グループには小型機のパイロットや元客室乗務員、それに航空会社の荷物係やプログラマーが関わっていて、果たして乗客満載の747型機をどのように消したのか、驚きの結末が待っている。

サンフランシスコ

現場臨場

サンフランシスコ

サンフランシスコの色々な街や通りの名前が登場する。向かいの住人とのケンカ腰のやり取りでは、坂の多い町で車を止めるスペースを確保する日常が目に浮かぶ。きれいな街だが、霧が出ると肌寒い日も多い。

成田、羽田、関西の各空港から直行フライトあり

タホー湖
タホー湖

タホー湖

747がレーダーから消えたのがこのタホー湖の付近。べレッカーはタホー湖に着水したのではと推理する。カリフォルニア州とネバダ州の境に在って、シェラネバダの山中で標高が高く、世界有数のスキーリゾートでもある。